エルの楽園

Twitterで垂れ流すには見苦しい長文を置きます。 あ、はてな女子です。

ルンバの購入に反対しているのは夫なのか妻なのか


ルンバ購入に反対する配偶者として、下記の二説がある。

「夫が妻の家事の手抜きを許さず、ルンバを買い渋る」

「妻が家事の手抜きをしていると思われたくなく、ルンバを買い渋る」

こういうことはデータがないとどこまでいっても議論が平行線だから、本記事では定量的に考えたい。

 

まず、ルンバ……というかロボット掃除機への意識調査としてこのようなものがある。


ロボット掃除機に関するアンケート|マーシュのミニリサーチ

ここのローデータを用い、「既婚者」かつ「ロボット掃除機の購入を考えていない」男女について以下の通りデータを抽出・加工した。

ではどうぞ。

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で、これは購入を検討していない理由の一覧とその回答数。これは男女混合で、複数回答されている。

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理由一覧はこちらの通り。

  1. 吸引力が十分か気になる
  2. 隅まで綺麗に掃除できるのか気になる
  3. 耐久性(長く使えるか)が気になる
  4. 稼働中の音が気になる
  5. 価格が高い
  6. 電気代が高い・高くつきそう
  7. サイズが大きい
  8. 好みのデザインがない
  9. 使いこなせるか不安(設定・操作など)
  10. そこまで家が広くない
  11. 間取り・配置・家具などが適さないと思う
  12. 小さな子供がいる・ペットがいる
  13. かえって面倒そう
  14. 家事を怠けていると思われたくない
  15. 掃除は自分の手でやりたい
  16. 特に欲しいと思わない、またはすでに持っている
  17. その他

トップ3の理由は「価格が高い」「隅まできれいに掃除できるか気になる」「間取りなどが適さない」で、下から3つの理由が「好みのデザインがない」「家事を怠けていると思われたくない」「サイズが大きい」だ。

 

まぁつまりその、そういう訳ですね。

そんじゃーね!

大阪ブロガー万博に参加します

和田一郎様(id:yumejitsugen1)主催の大阪ブロガー万博に参加表明しました。

ご参加はこちらからです。

ATND: 大阪ブロガー万博

 

一応大阪人だし、和田一郎様やはせおやさい様にはお目にかかってみたかったし、はてなブログはてなダイアリーももう一つブログもアクティブに運用してるのでブロガーの条件には該当するよな、うん、ということで参加者の皆様よろしくお願いいたします。優しくしていただけますと幸いです。

他にも大阪にはあんまりパブリックなオフ会ないよなぁとか、最近大阪と名の付く町おこしイベントにかかわってそれがとんでもない黒歴史に終わったから心が癒されるような楽しいご当地イベントに参加したかったとかいう動機もあります。この話はいずれほとぼりが冷めたら厄落としにしたいなぁ……

 

Twitterよりも更に気軽でClosedな個人用情報発信ツールが流行っている昨今、ブログどころかパーマリンクがもう古いとか言われてしまっているレベルですが、それでもある程度の量の情報をパーマリンクつけて発信する行為の意義が消える訳ありません。

そのためにブログというツールを使うかどうかはまた別の問題ですが、でもライトなCMSとしてのブログツールはすっかりコモディティ品となりましたし、特別な理由がない限り長文をインターネッツ上に置きたい場合はブログツールを選択するのが一般的かなと思います。もう今となってはいちいちHTMLとか書いてられないよね!

 

当日を楽しみにしております。

黄鉄鉱の引き取り先を探しています

 

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高校生の頃に買い集めた黄鉄鉱ですが、飾る場所がないので手放そうと思っています。引き取り先を探しています。

全部スペイン・ナバフン鉱山産の立方体黄鉄鉱です。東京国際ミネラルフェアでゲットしました。

可愛がって下さる方、もしくは可愛がって下さる方を見つけてくれるお店を教えてください。自薦他薦問いません。全員一気に引き取っていただいても結構ですし、この子がほしいというご指名もOKです。

ご連絡はtwitter @liliput、あるいはこの記事のコメント欄に頂けますと幸いです。更にアップの写真がご入用の場合はお知らせください。

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複雑な形をしている小さい子たち勢ぞろい。

そろそろ問題解決能力について一言いっておくか

日本人学生の問題解決能力って高いんじゃん: 極東ブログ

ここで問われているのは、問題解決の能力であり、批判的思考法という学力である。こうした面では、日本は劣っていると日本国内的なイメージでは思われていたのだが、記事を読むとそうでもない。

調査結果についてまず極東ブログ様の元記事をお読み頂くとして、本稿ではそもそも問題解決能力とは何を指すか、PISAでは何を測定しているのかについてまとめる。

なお、日本の問題解決能力調査結果は以下の通りOECDによる公式のカントリーノートが出ている。

http://www.oecd.org/pisa/keyfindings/PISA-2012-PS-results-jpn-JAPAN.pdf

 

まずおさらい。

PISAとはOECDが15歳児を対象に、3年おきに実施している国際的な学習到達度調査だ。最新の実施は2012年で、我が国では15歳の高校1年生6,300人が参加した。

元々は数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3つについて調査していたが、2012年度はそれに加えて問題解決能力が追加された。したがって、問題解決能力については過去のデータは存在しない。

PISA2012による問題解決能力の定義

"… 解決の方法が直ぐには分からない問題状況を理解し、問題解決のために、認知的プロセスに関わろうとする個人の能力。そこには建設的で思慮深い一市民として、個人の可能性を実現するために、自ら進んで問題状況に関わろうとする意思も含まれる。"
問題解決能力の調査は、解決のための専門的知識の求められない問題(例えば、なじみのない自動券売機において、すべての条件を満たしながら一番よいチケットを買うといった問題)を生徒たちに尋ね、生徒の一般的な推論能力や問題解決に向けてのプロセスを組み立てる能力、それに進んで取り組む意思に焦点を合わせている。
一方、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーに関するPISAの通常の調査に問題解決の課題が含まれる場合、これらの問題を解くには、問題解決能力に加えて、カリキュラムの知識が求められている。

(改行は引用者による)

http://www.oecd.org/pisa/keyfindings/PISA-2012-PS-results-jpn-JAPAN.pdf

これだけでは抽象的すぎてわかりにくいだろうから、以下に測定に使用された問題例を掲載する。

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日本語版の問題例は以下より引用した。

http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_item_ps.pdf

実際の問題に挑戦したい方は下記リンクから。

http://cbasq.acer.edu.au/index.php?cmd=toProblemSolving

 

批判的思考力?問題解決能力?

上記のテストによって測定される能力が一般的な意味での「問題解決能力」に該当するかどうかはここでは問わない。でも、ぜひ多くのひとのご意見を聞いてみたいテーマだ。

結構多くのひとが「こんなのだとは思わなかった!」という感想を持つのではないだろうか?見慣れぬ自動販売機や地図、MP3プレイヤーの操作法など「いや……確かにそーゆーのも生活で直面する『問題』ではあるけれどさぁ……もっとこう……」

もっとこう?

もっとこう、何だったら「これぞ問題解決能力だ!」と思えるのか?

それは如何なるテストで測れる能力なのか?

 

少なくともこのPISAで測定された「問題解決能力」には、「批判的思考」の能力はほとんど含まれていない。批判的思考が何であるかについては諸定義があるが、大半がある意見や論説を批判的に検討する能力を指している。批判的思考力はどちらかというと「リテラシー」に近いものだ。

 

1930年代から認知科学領域においてその概念が検討され続け、定義について一応のコンセンサスが得られている批判的思考にくらべて、問題解決能力はより多くの分野で様々なアプローチから検討されているために、未だ共通の定義と言えるものが存在していないように見える。領域によって実効性のある「問題解決能力」の内実は異なるだろうから、個人的には問題解決能力の中に何を含めるかは今のところ各人の自由で結構だと思っている。

ただその自由度の高さの所為で、問題解決能力という言葉の持つ情報量が少なくなってしまっている。「問題解決能力」という言葉を使う際は、定義を測定方法込みで提示してほしいと常々思っている。

特に企業の採用担当者で「問題解決能力が高い人材が欲しい」などと言っているところは、具体的に何ができたら「問題解決能力が高い」と判定されるのか、一度検討してみるといいんじゃないだろうか。なにか御社は問題を抱えているから問題解決能力が高い人材が欲しいんだろう?その高い問題解決能力で解決してほしい御社の課題は一体なんなのか?

 

----結論: テストを書け、テストを。

 

 

大阪市長選ならびに大阪都構想についての一市民の見解

※発言はすべて個人の感想です。

 

  しかし、橋下徹さんは言うまでもなく、その対抗候補が事前の予想をはるかに上回る面白ピーポーで固められている現状を、大阪市にお住まいの皆さまはどうお感じになられているのでしょうか。

大阪市長選がいろいろとアレな件で: やまもといちろうBLOG(ブログ)

と都民の方からお尋ねがあったので一市民の見解をご紹介する。

 

まず自己紹介。関西人歴12年、うち大阪人歴5年。主に大阪市キタエリアに居住しているが、阪南エリアもちょろちょろ。まだあべのハルカスには行ってない。大阪に来る前は都民だったが関西のメシが旨すぎるのでもう東京に戻りたくはない。

橋下市長については概ねよくやって下さっているとは思ってはいるが最近はどうもお仕事に雑さが目立つし、かつ都構想にはまったく賛成できない。本件については後述する。

 

で、今回の選挙についてどう思っているかですって?

 

よほど維新の会の熱心な支持者でない限り、今回の選挙に道理も大義もないことは全大阪人が理解している。しかし、実のところどうしようもなかったし今この瞬間においてもどうしたらいいのか分かっているひとはいないのではないだろうか。

ぶっちゃけ都構想について理解なり賛成なりをしている市民は多数派ではない。しかしながら市長は大変にご意志の強い方であらせられるし、彼を無理に引きずりおろして再選挙したところで対立候補は今回の通りお察しだ。一体何をどうやればこの事態が打開できるというのか?この心境を一言で説明するなら「あきらめ」だ。

この辺りの気持は都民も同じではないだろうか。誰も前回の都知事選に満足なんかしていないのだろうが、ではどうすればそんな事態を解決できたというのか?「ロクな候補者がいない」という問題の根はあまりにも広く深い。こんな時、現行の選挙制度の限界を感じてしまう。

(see also: 理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書))

事態はなるべくしてこうなったし、誰にも止められなかった。天災と一緒だ。ならば精々税金を使った分くらいはおもろいお祭として今回の選挙を消費するしかないんじゃない??いやーー本当におもろいメンツが集まって嬉しいわーーお笑いの街の面目躍如だわーー( ゚∀゚)アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\ 

 

……以前に都民と大阪市民と武雄市民と阿久根市民辺りで「スチャラカな首長を頂く市民の会」を結成し「本ッ当にウチのメイヤーはしょうがねーよなー」とグダグダ飲んだくれる宴会をしたいと構想していたが、今でもその気持は変わらない。該当する市民の方、よろしければご一緒に飲みませんか?

 

今回の選挙に関する感想ですが、こちらからは以上です。

 

ここからは都構想についての話。

 

都構想についての詳細はこちらに維新の会による公式サイトがあるからそちらをご覧いただきたい。

大阪都構想 二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。|大阪維新の会(日本維新の会 大阪府総支部)

 

ざっくり説明するとこういうロジックだ。

・大阪は大都市なのにどうも貧乏で景気が悪い。それはなぜか?

→それは大阪市大阪府とで足並みを揃えずバラバラに予算を使い、それが全部無駄になったからだ。二重行政が悪いんや!!

→したがって大阪市大阪都にし二重行政を解消すれば万事解決!

大阪都で全体的な成長戦略を、都内各区できめ細やかな基礎自治サービスを提供するよ!これで役割分担完璧、二重行政は解消される!

 

我が国には現在20の政令指定都市がある。実は大阪府内にももう一つ堺市があるのに、なぜかそっちは完全放置だ。横浜市民でも、名古屋市民でもいいが、自分のところの市長がある日こんなことを言い出したらどんな気持がする?とりあえず頭痛はするでしょ??

それで市長が乱心したから取り換えようと思っても、対立候補は下手な吉本芸人よりおもろいキャラばっかりなんやでーー( ゚∀゚)アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\ 

 

……実のところ橋本市長は大阪都構想を市長になる前から提唱していたから、大阪市民は彼を乱心していると知りながら当選させた訳なのだが、大阪市民の大半は今に至るまで大阪都構想脱原発くらいには「できっこない」と思っている。だから市長がどんなに大阪都構想を声高に唱えようが、ほとんど実害はないのだ。まぁたまにこうして6億円くらい無駄にされるくらいである。

 

その上で都構想については下記の点に強い懸念がある。

  1. 大阪市が貧乏なのは本当であり、その原因に税金のムダづかいもあるだろうが、それは本当に二重行政の解消によって解決するのか?
  2. そもそも都の掲げる成長戦略とは何なのか?
  3. 二重行政は都構想によってしか解消できないのか?

 

まず第一の点。

Q.08二重行政のせいで、どれくらいの税金がムダになったの?

これまで大阪府大阪市は、類似の施設やプロジェクトに競い合うように税金を費やしてきました。こうした二重行政による「お金のムダ」は膨大な額にのぼります。例えば、大阪府りんくうゲートタワービルに659億円、大阪市WTCに1,193億円の税金を投入しましたが、どちらの事業も破綻しました。それ以外にも二重にムダな税金が費やされてきた施設、プロジェクトは枚挙にいとまがないくらいです。こうした「お金のムダ」を無くすのが大阪都構想です。

 

大阪都構想について|都構想のQ&A|大阪都構想 二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。|大阪維新の会(日本維新の会 大阪府総支部)

例に挙げられているりんくうゲートタワーとWTCだが、両者は地理的にかなり離れているものの、どちらもオフィスビルとして使用したいとは到底思えないほど辺鄙なところにある。東京都で例えると……そうだな、片方は成田空港横づけでもう片方が東久留米とか?

両方とも破綻したのは事実だが、その原因はどちらもロクな見通しなく辺鄙なところに分不相応な巨大ビルを建設したからであり、府と市がバラバラに事業を行ったからではない。府と市が連携してどちらか片方のみに建てていたら成功していたとでもいうのか?断言してもいいが、建設されたのがWTCだけだったところで結果は同じだっただろう。他の事業についても同様だ。

 府も市も税金の無駄遣いをしているのは確かかもしれないが、その原因は二重行政などではない。根本的に税金投資のポリシーが誤っている。このポリシーを修正しない限り、二重行政が解消されようがなんだろうが結果は同じだ。

 

次に第二の点。

維新の会のひとたちは「成長戦略」が口癖だ。廻るピンクドラムを彷彿とさせるレベルである。しかしその「成長戦略」の中身が何であるか、一般の大阪人はマトモに聞かされたことがない。精々カジノ構想ぐらいか?しかしそのカジノ構想もなぜか一度失敗済みの南港エリア(先述のWTCがあるところね)を再開発してカジノを作るとかいうもので、なぜ一度焦土になった野辺に更に税金を投入するのかさっぱり意味がわからなかった。

まだほかにももっとマシな成長戦略があるのかもしれない。しかし個人的には「成長戦略」なるものを大阪府全域で一本化すべきなのかどうか、という点から疑問を持っている。大阪府は広く、地政学的にも多様性がある。どんな成長戦略だか知らないが、泉佐野市と大阪市能勢町で同じ戦略が通用するとは思えない。むしろ全体で共通のサービスを提供すべき基礎自治サービスこそ広域で取り組み、成長戦略は地域の多様性を重んじるべきではないだろうか?

 

そして第三の点。

二重行政問題は大阪だけの問題ではなく、政令指定都市を抱える多くの土地で発生している。政令指定都市は権限が大きく、他の街なら都道府県が担当する領域にまで足を踏み込んでいるので、いわゆる二重行政問題が発生するのだ。

これを解消するには大阪都なんかにする必要はなく、単に大阪府大阪市から手を引けばいいのである。警察や河川の管理はさすがに移譲が現実的でない事務だが、かぶっている領域については手を引けるはずだ。

Q.07二重行政は「大阪都」にしなければ解消できないのか?

できません。組織と指揮命令系統の一本化がどうしても必要です。

大阪都構想について|都構想のQ&A|大阪都構想 二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。|大阪維新の会(日本維新の会 大阪府総支部)

 大阪府大阪市から撤退すれば組織も指揮命令系統も問題なく一本化される。

 

個人的には以前から「都道府県、いらないんじゃない?」と思っていた。広域にかかる事務や行政を執り行うには一部事務組合や広域連合という制度がある。現行の都道府県の垣根を越えて、市区町村レベルで組むべき街と組めばいいのだ。都道府県という区分けの仕方はあまり実情に沿っているとは思えない。なぜ尼崎が大阪ではなく兵庫なのか?とか。

そんなに二重行政が嫌なら、いっそいくつかの事務を処理するための広域連合のみを残して大阪府を廃止してはどうだろうか。市を解体するのではなく府が消滅するという選択肢が検討されないのはなぜなのか?この方が維新の会がモデルとして掲げる諸外国の連合市制度にも合っていると思うのだが。

長岡で話したこと / 話さなかったこと #NDS35

第35回勉強会(2013/01/18) & 新潟開発者新年会(NDS) – 長岡 IT開発者 勉強会(NDS)

にお招きいただいて組織設計(?)の話をしてきました。

IT開発者でないひとが紛れ込んで浮きまくっていたにも関わぬらず、暖かく受け入れてくださり感激です。是非今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

さて組織設計の話ですが、資料作成の段階では実際に長岡でお話したことの4倍のネタを考え、そしてその3/4を捨てました。捨てたことの大半がトップマネジメントにかかる話であり、需要がないだろうと判断したためです。でもせっかく考えたので勿体ないですから、本稿では実際に長岡でお話したことと併せて、切り捨てた事項をボーナストラックとしてすこしご紹介します。

ゲイリー・ハメル教授も指摘しておられましたが、経営学は企業のトップマネジメントの御用学問として発展してきた側面があります。しかし現実の経営の立役者は一握りのトップマネージャーではなく、実際に日々の業務を担っている現場のスタッフのはずです。現場の人々にとって役に立つ経営学アプローチはないのか、それはどのような姿をしているのかは日々模索しているところですが、NDSはそれらの課題を改めて考え、聞いて頂くいい機会となりました。すこしでも面白がって頂けたなら幸いです。

なお、実際に使用したスライドは公開しません。読みにくいので。ご不明点等ございましたらTwitterかコメント欄でお気軽にお尋ねいただけますと幸いです。ブコメは見ておりません。

 

長岡で話したこと・まとめ

  •  いわゆる正統な組織設計原則とかあんまり普段の生活で役に立たないよ。それよりもプロジェクトマネジメントっぽく考えた方がいいよ。
  • 組織計画は時間を区切って考えるべきだよ。時間経過によって状況がどんどん変わるし、何がいい組織かは状況から決定されるしね。
  • 常にバッファを持っていた方がいいよ。そうしないと臨機応変に対応できないから。100%全力投球はおススメしないよ。
  • 人間の自然な思考の流れや生物学的な特徴に配慮するべきだよ。それでやることのパフォーマンスが大きく変わるんだよ。
  • 何を判断するにも客観的な根拠を得るべきだよ。人間にはとても勘違いが多いし、根拠がないと周りのひとだって納得しないよ。それは本当にそうなのかよく考えてみて。
  • 改善は少しずつでもとにかくやってみることが大事だよ。少しずつじわじわ変えるのが結局は一番早道だからね。

 

長岡で話さなかったこと(順不同)

  • マネージャーはとにかく現場のスタッフの邪魔をしないのが一番の仕事だよ。自分が邪魔で生産性を下げるとか本気でやめた方がいいよ。
  • 邪魔をしないってのは色んな意味があるよ。意図的に邪魔をしていなくても、気づかないうちにやる気殺ぐようなことしてない?
  • 意志決定のボトルネックになってないかな?何でもマネージャーに相談しないとスタッフがなにも決められないのは、スタッフが無能だからじゃなくてそういう決まりになっているからなんじゃない?
  • 「トップの一声で何でも決まるスピード経営」とか本気で言ってるの?スピード経営ってのは経営における意志決定が早いって意味だけれど、トップただひとりしか意志決定ができないならひとり分のスピードしか出せないんだよ?
  • ほとんどの危機は自分より下の立場のひとが先に気付くよ。だから彼らのアラートに耳を貸すべきだよ。
  • でもいちいちそういうアラートにかかずらっていたら物凄く手間がかかるよね?だからマネージャー個別の労力じゃなくて、無数の小さな実験が随時できるようなシステムによってそういう危機への対応を検証すべきなんだよ。
  • 経営者は成功する確率の高い賭けよりも期待値の高い賭けに乗るべきだよ。そうしないとどんどん経営がシュリンクして自滅してしまうよ。
  • でも確率より期待値をとるのは人間の本能に逆らった行動でとても難しいよ。だからこそトップがルールとして全体にこういう行動を義務付ける必要があるよ。
  • こういう博打ができるほどのリソースバッファの確保が2番目に重要なマネージャーの仕事だよ。リスクマネジメントってのは極限までリスクを減らしたうえで、失敗してもそのリスク分耐えられる体力を確保しておくって意味だよ。
  • 組織の内部構造は自社のプロダクトやサービスの在り方を制約するよ。クソな組織から生み出されたプロダクトやサービスはクソになってしまうよ。だからマーケティングとマネジメントは元来切り離せないんだよ。
  • 「こんなプロダクトやサービスを提供するにはどういう組織がいいか?」から考えてみるのもいいんじゃないかな。
  • 組織の中身を部署に小分けするのを組織設計だと思ってない?それはやり方の一つにすぎないよ。組織は動的に変化するけれど、部署の小分けはそれに対応できるのかな?他のやり方を調べて、一番目的に合うベストな方法を検討してみて。
  • あ、教養程度の統計学は分かっておいて。そうでないと上記のことは実行できないよ。

 

参考文献 どれも面白いからぜひ読んでみて!

 

Joel on Software

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経営の未来

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イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

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ファスト&スロー (上): あなたの意思はどのように決まるか?

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プライスレス 必ず得する行動経済学の法則

プライスレス 必ず得する行動経済学の法則

 

 

フェイスブック時代のオープン企業戦略

フェイスブック時代のオープン企業戦略

 

 

グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press)

グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 (Harvard Business School Press)

 

 

 

統計学が最強の学問である

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数学女子 智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。

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いいアイデアの諸条件

 Twitterで「いいアイデアを出すには枠にはまらない思考が求められるから、その分野に詳しくない方がいい」というテーゼをめぐる発言を見かけたので、思うところを書いてみる。

 

いいアイデアとはそもそもどのようにして判定されるか

 一見して「いいアイデア」だと思われるアイデアは、以下の項目によって判定される。

  1. 独創性
  2. シンプルさ
  3. 実現可能性
  4. コストパフォーマンス
  5. 影響力・適用可能範囲
  6. 直感的好ましさ

 まず「独創性」。これがいいアイデアとされる条件の40%くらいを占めているように思う。とにかく、変わっていて見慣れないものならこの項目はそれだけ高く評価される。そしてこの独創性を確保するために「枠にとらわれない思考」が要求され、それを実現するために「あまり業界知識がない方がいい」とされるのだが、結論から言うとこの命題は誤りだ。後述するが、知識の有無と枠にとらわれない思考ができるかどうかはあまり関係がないし、枠にとらわれない思考をコンスタントに生み出さなければいけない状況下だと、返って知識の無さが裏目に出てしまう。

 次に「シンプルさ」。簡潔さ、分かりやすさとしてもいい。そのアイデアについて短い説明を聞いただけで、聞き手の側にそれがどんなものであるか容易に想起されるようなものだ。このシンプルさはアイデアの足切り項目のように機能している。説明が長くなり、わかりにくいものはこの項目において足きりされ、その後の入念な検証が行われにくい。

 「実現可能性」と「コストパフォーマンス」は一見しただけでは解りにくい場合もあるが「低コストで今すぐにできそう!」なアイデアは高い評価を受ける傾向にある。また、少ないコストで多大なリターンがあるアイデアは後の検証にもよく耐え、実際に採用される確率が高まる。

 「適用可能範囲」が評価されるかどうかは分野によるが、「影響力」は大きい方が高い評価を受ける。長年悩んでいた困難を一瞬で根絶できるほどの強力なアイデアや、広く他分野に応用可能な汎用性の高いアイデアは一般によいアイデアとされる。垂直に展開する効果と水平に展開する効果といったところだろうか。

 アイデアの好ましさの話をしているのに直感的好ましさを持ち出すのはすこし気が引けるが、ここで挙げているのは理屈抜きの、反射的に感じる好ましさである。花は汚物より好ましいし、大量殺人のアイデアよりも難病治療に貢献するアイデアの方がより社会から好まれる。そのような好ましい外形を備えているかどうかにかかる項目である。

 

 これらの項目にはそれぞれに重みづけがあるものの、あるアイデアの「よさ」はこれらの総合得点によって評価される。独創性において抜きん出ていれば少々汎用性が低くても見逃されるかもしれないし、華々しさはなくても大きな影響力と高いコストパフォーマンスがあると一見してわかるものなら高く評価される。

 どれか一つだけ高い得点を得てもそれだけでいいアイデアとはされないし、またいくつかの項目に失点があったところでそれだけで悪いアイデアとされる訳でもない。

 

独創性の生み出し方

 単に知識がないだけのズブの素人がすぐに思いつくようなアイデアは、確かに良いアイデアと言えないものが多いように思う。人間の思考にはある程度のパターンが存在し、「思いつきやすい」アイデアというものが存在するからだ。そのようなものはとっくの昔に玄人衆によって検証済みの陳腐なアイデアであったりする。

 その分野の知識がない「素人」が卓越したアイデアを出す場合は、「素人」によって他分野の知識がその分野の知識と結合したときだ。その素人はその分野において「素人」なのかもしれないが、他の分野ではそこで培った大きな知見を持った玄人である場合がある。そのような人物が、ある分野での知識モデルを異なる分野に適用して発想した場合、独創性において卓越しつつも洗練されたシンプルさや地に足のついたコストパフォーマンスを併せ持つ優れたアイデアを出すことが可能になる。

 独創性はシステマティックな量産が可能だ。独創性の高いアイデアを生むいくつかの方法が開発されているが、「オズボーンのチェックリスト」「マッチ&ビルド」「マインド・マップ」「KJ法」「象限分割法」などがよく用いられているようだ。そしてこのいずれの方法を取るにしろ、その分野に関する充分な知識がないとアイデアが生み出せない。これらの方法は既存の知識を下地にし、それらを分類したり違う側面から分析したりして「思考の枠」を可視化し、それを踏み越えて独創的なアイデアを生む方法だからだ。

 

いいアイデア?悪いアイデア?

 アイデアの目的は問題解決にあるから、実のところ独創性はアイデアの「よさ」においてそう本質的な問題ではないのではないかとも思っている。実用上は独創性よりも影響力やコストパフォーマンスの方がはるかに重要だ。ただずっと解決されなかった問題をバッサリ解決するようなアイデアは、それまでに生まれた幾多のアイデアとは大きく異なって見えるものだろう。その場合、独創性は結果だ。

 アイデアは磨ける。たとえ独創性においてさえも。そして知識はアイデアを生む上で制約にはならない。むしろ網羅的な知識は素人の思いつきを凌駕する。もし素人がいいアイデアを出したように見えたとしたら、それは素人がいいアイデアを出したのではなく、他分野の見識を持つひとがアイデアを出したのだ。「いいアイデアにはそもそも何が必要か」「枠にはまらない発想とは具体的になんのことか」を詰めていくと、いいアイデアを出す手掛かりになるのではないだろうか。