エルの楽園

Twitterで垂れ流すには見苦しい長文を置きます。 あ、はてな女子です。

「だんまり」の取扱説明書が欲しい

Togetterでこんなまとめを見かけました。

togetter.com

本編もさることながら、コメント欄がとても興味深いです。

 

かつて察してちゃんの気持をできる限り描写して、察してちゃんご本人方から「まさにこれはわたしのこと!」と大好評を頂くまでに至ったわたしですが、察してちゃんの気持はまだ想像できても、黙り込むひとの気持はまったく想像できません。

多分、黙り込む系のひとにも色々な理由があるとは思うのですよね。今までに立てた仮説としては

  • 喉が弱くてあんまりたくさん喋ることができず、一定量を超えると黙ってしまう
  • 他人からの問いを理解するのに時間がかかり、考え込んでしまう
  • 内心を言葉にするのが苦手で、応答を考えるのに時間がかかってしまう

あたりかな?と思っていたのですが、とにかく黙り込むひとは何にも反応がないので、これらの仮説がどの程度当たっているかの検証もできずにいました。

今回のまとめに寄せられたコメントで「あーなるほど、こういう理由があるのね!」といくつか新たな気づきが得られるものがありました。

私は黙ってしまう方の人間。特に相手が正論の場合は、こっちは言うべき事がないから黙る。けど、ダメと解かっていても出来ないもんは出来ない。それこそ出来ない相談。相手はまた正論なもんだから、正しい道なもんだから、従うのが当然と思っていて、こっちには譲ってくれない。だからボイコットするしか手がない。何時間と粘って答えを聞き出そうとしても無駄ですよ。ボイコットだもの。

まめ太 @ayato16160267 

ああなるほど、譲ってほしいのか!

この奥さんがどうかは知らないけど、相手をだんまりにしちゃう人って「何で○○できないの?」という詰問を相手にぶつけてしまってることが多い気がする。「○○が絶対正しいのに、何故あなたはできないのか」という頭ごなしで上から目線全開の不快な質問を平然とぶつけて続けていると、そのうち相手は無視したり「はいはいごめんね」といなして取り合わなくなってくる。相手に会話を求める前に自分がちゃんと「会話」できているかまず確認してみるのも大事なことなんじゃないかな。

にく @me2_2929

「何で○○できないの?」という質問が「「○○が絶対正しいのに、何故あなたはできないのか」という頭ごなしで上から目線全開の不快な質問」に聞こえる、というお話。ふむふむ。

だんまりしちゃう人は自分の意見を否定され続けてきた人です。否定も肯定もされないために黙るただの処世術。それを責めるのは酷。

灰色 @haiiro081

「意見を否定されたくない」という気持が黙る、という行動に出る。

 

それを見てわたしが投下したコメントがこちらなんですが

なるほど、コメント見てだんまり系のひとの気持がちょっと分かった。自分が正しくないことは自覚できても、それを認めたり相手に譲歩をお願いしたりするのは嫌なのね。別に常に正しくあれるひとなんていないんだから、自分が正しく振る舞えなかったとしても萎縮して黙り込んだりせずに「自分には無理だから、申し訳ないがここは譲歩してほしいlと言えばいいですよ。そうしないと相手も分からないので。

Matsuki *** @liliput

それに対して頂いたリプがこちらです。

>>liliput それを言って、絶対にイラッとしませんか?絶対に「何言ってんだオマエ」って気持ちにならないですか?それを言って、他の人たちも落ち着いて理解する姿勢をとれるという予測はあるのでしょうか?みみっちくてスイマセン。

evacuated_man @evacuated_man 

イラッとする!!おおお、そんなことが気になるのか!!つまり、黙り込んでしまうのは「自分の言葉で相手を不愉快にさせるのは嫌だ」という動機だったりすることもあるのですね。

以上の情報から段々と見えてきた「だんまり」のメカニズムは以下のようなものです。

1. 「(自分⁺相手) VS 問題」ではなく「自分 VS 相手」という世界観を持っている

割とこれがアルファにしてオメガな気もします。問うている側は「一緒に問題解決をしたい」という気持で意見を聞いているのに、黙り込む側は「その問題の原因や責任の所在が自分にあるとされ、責められている」と思っているのですね。だから、その問題を問題として扱われること自体が自分への攻撃だと解釈してしまう。

このような考えになると、他のコメントにも散見された「勝ち負け」「譲歩」という言葉遣いの理由も分かってきます。「自分 VS 相手」だから、その問題の着地点は「どっちかが折れる」しかない。第3の解を探るとか、そういう発想はなくなってしまうのでしょう。

この気持はちょっと分かる気がします。まとめで扱われていたテーマは育児というなかなか重いテーマでしたが、もしこれが自分では超どうでもいいと思っているような問題……例えば配偶者から「ちょっと、冷蔵庫の中のボトルは高さの順に並べてって言ったでしょ!なんでそんなこともできないの?!」と責められたとしたら(はぁぁマジでどうでもいいだろそんなことバーカバーカ、そんなことで突っかかってくるなんてこいつ俺の事嫌いなの???)と思ってしまうと思います。それが相手にとってとても大事な問題で、解決が必要なんだと気づくにはもうちょっと説明が欲しくなりますね。

ちなみにこのテーマについては

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

 

 が詳しく取り上げています。「自分 VS 相手」ではなく「(自分⁺相手) VS 問題」の構図に持っていけ、というアイデアは同書からもらいました。

2. 自分を否定され、傷つけられたくない

目的が問題解決になく「自分 VS 相手」のバトルで勝利を収める、あるいは被害を最小限に抑えることなのだとしたら、こちらから闇雲に動かないという籠城戦法は合理的です。なにしろ攻めてきているのは向こうなのだから、こちらから下手に攻撃して損害を出すよりも、相手が諦めて退却するまで待つのは得策です。

特に自分が攻撃力において劣る――「正しくない」側にいると自覚している時はほぼこれしか解がないでしょうね。「正しくないのは自分」と認めてしまったら、その段階でバトルに負けてしまいます。

「自分は正しくない」と思いながら、それでも反撃を企てて潰され追加のダメージを食らうくらいなら、何も言わない方がマシだ、という判断は大変合理性があり、納得できます。

3. 自分の言葉で相手を不機嫌にさせたくない

以上のような思考をたどると「自分が何か言い、その結果相手が不機嫌になる」というのは最高の愚策であると分かります。人間関係バトルにおいては自分の"失言"で相手の気分を損ねる、というのは文句なしに失点のひとつであり、相手に言質を取らせることになります。

また、不機嫌になった相手は更に攻撃の手を強めるだろうとも予想できます。こちらから攻撃はしない以上、戦闘終了は相手の撤退以外あり得ません。できるだけ戦闘を長引かせないようにするには、こっちから何もしないのが一番です。

目的が問題解決に向いている時は相手が一時的にちょっとばかり不機嫌になろうがなんだろうが、それは問題の本質ではないのであんまり気にならないのですが、黙り込んでいるひとには「問題」は見えておらず「相手」しか見えていません。相手の感情のゆれが大問題になってしまいます。

 

以上を踏まえて、黙り込んでしまう相手への対応案を考えてみます。

 

目的は問題解決であり、あなたを責めている訳ではないと強調する

まとめの例だと、達成したい目的は「子どもを食事中に立ち歩かせない」ことであり、「お父さんがウロウロする」ことは真の目的ではない訳です。事実、まとめ中にもお父さんの行動を制限することなく目的を達成する案がいくつか提示されています。

もちろん「お父さんの行動を変える」が最短の解決策ではあるでしょうが、それが無理な場合には他の案もあるのです。他の案もあると提示しつつ、最適な案を選ぶために食事中に立ち歩く理由があるなら知りたい、と聞いてみるといいかもしれません。

絶対に不機嫌にならない、「譲歩」もすると約束する

黙り込むひとが恐れているのは怒りの増加と自己の否定です。「不機嫌にならない」というのが曖昧なら、声を荒げたり悪口を言ったりしない、という定義でもいいかもしれません。また、あなたがそうして欲しいならこちらには「譲歩」の用意があるから、もしそうして欲しいと思っているならそう伝えてほしい、と言うのも効果があるのかな?と思います。

また、できるだけ自分に有利に話を勧めたい、あるいはさっさとバトルを終わらせたいと思っているだんまり系のひとには以下の方法が有利かと思います。

条件を早めに提示する

「君の話は分かったけれど自分にはどうにもできない、申し訳ないがそっちが折れてほしい。これ以上自分を責めるならもう話さない」と宣言してから黙る……だけでも随分違うと思います。

黙る側としては譲歩を引き出すべく黙っているのでしょうが、何しろ相手側は「どうして黙ってるんだろう、お腹でも痛いのかな?」などと思っています。譲歩を望んでいると分かったらそれはそれでお互いがどの程度折れるか、の定量的な話に移行しますので、議論が穏やかになると思います。

これでは火に油を注ぐのではないか、というご意見もありますが、個人的にはそう言ってもらった方が気が楽ですね……もし相手側が詰問によって自分への服従を求めるタイプであれば、それは黙ろうが何か言おうがどの道議論にはならないと思います。相手がどっちのタイプかは「だって無理なんだもーん」と開き直ってみせた時に判定ができるでしょう。どちらにせよ多分だんまりより、開き直りの方が話が早く終わります。

それで結局、何て質問したらいいの?

個人的にだんまり系の方に聞きたいのは、「どういう風に質問したら純粋な質問だと理解してもらえるの?」という点です。

『あなたの食事中のふるまいをみて子どもたちがそれでいいのだ、と真似するようになっちゃうことについて、あなたとしてはどう思っているの?』という質問、これは効く側にとっては純粋な質問のつもりなんですよね。あり得る応答としては

「よくないとは思ってる」

「さすが俺の子wwwそっくりwwwww可愛いwwwwww」

「どうでもいい、細かいこと。気にするな」

「好ましいことではないかもしれないが躾でカバーできるはず、お前がもっと子どもの教育を頑張れ」

等があると思います。

「こんな返答をされて腹が立たないのか……?」と思われるかもしれませんが、個人的には本格的に腹は立ちません。「ふーん、意外とおおらかなひとなのねぇ」と思うか、「そうやってなんでも人任せにするなら偶にはねぎらってよ、美味しい物食べに連れて行って!」という交渉に入るかもしれません。純粋に思いを知りたくて聞いたので、その返答がなんであれ特に怒りは湧きません。

むしろ黙り込むひとの方が他人の感情に敏感な分、繊細で動きやすい感情を持っているのかな?とも思います。おそらくそういうひとは世界や他者に対して常に怯えを抱いているだろうから、気持の動きさえ分かればできるだけ配慮してあげたいな、とも思うのです。

だから黙り込む系のひとにお尋ねしたいのですが、どのように質問すれば「ああ、これは自分を責めているんじゃないな。純粋な質問なんだ」と思ってもらえるのでしょうか?これが分かればお互いもっと気持よく過ごせるんじゃないかな、と思っています。