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エルの楽園

Twitterで垂れ流すには見苦しい長文を置きます。 あ、はてな女子です。

夫婦別姓異聞

婚姻時に夫婦で異なる姓を選択できる夫婦別姓制度について、反対派の論拠の一つに

「子どもがかわいそう」

というものがある。

 

私は夫婦別姓制に賛成するが、その理由の一つはまさに「子どものため」なので、反対派のひとたちがどのような子ども観を持っているのかがとても気になる。彼らは実際に、夫婦で姓がことなる家庭に育った子どもを知っているのだろうか?

 

以下、私が見聞した事例を挙げたい。どちらも約10年前に採取した、ある夫婦別姓の家庭に育った2人の女性の話である。

 

1. Aちゃんの場合

この話をAちゃんから聞いたときにAちゃんは20歳で、彼女は自分の両親が婚姻関係にないことを18歳になるまで知らなかった。Aちゃんは大学進学時に一人暮らしをするため住民票をとり、そのときにはじめてその事実を知った。

「え、そんでどうしたの?」

「びっくりして家に帰って親に確認したよ!!でも二人とも『え、あんた知らんかったの?』みたいな反応だった。そんでもっとびっくりした」

 

Aちゃんの両親は二人とも大学教員である。両親の説明によると、仕事上都合がよいのでずっと事実婚状態にあったそうだ。ちなみに、Aちゃんは父親の姓を名乗っている。

 

「普通気づくでしょ、表札とか普段の会話とか学校とか、保険証とかあるし」

「いや気づかんもんだよ。家の表札は父親の名前。ご近所や学校では『(父親の姓)さん』って呼ばれてたし、母親もそれで普通に返事してた。学校では担任とか知ってたのかなー・・・・・・うーんわからん、話題にされたことない。おじいちゃんもおばあちゃんもそんな話したことない。そして親の保険証とか見ない。

母親が仕事で母親の姓を使ってたのは知ってた。でもそれは、職場で便宜上旧姓を使ってるだけで、まさか本当に結婚してないとは全然思わなかった」

 

「両親が結婚してないって、イヤじゃないの?」

「最初はびっくりしたけれど、親が『研究者ではよくあることだよ。○○さんやXXさんもそうなんだよ』みたいな風にサラッと言ってて、あーそうなんだって思った。よく考えると実害はないしね、今はなんとも思わない」

 

「ご両親は結婚式したの?」

「写真見たよー。普通に結婚式の写真あるw アルバムもあるしね」

 

「将来、お墓とか家とかどうするの?」

「なにそれw 跡取りとかそういうのどっちも全然ないしw 私一人っ子だけれどそういうの全然考えてないなー。まぁなるようになるんじゃない?」

 

「自分が結婚するときに問題になるって思わないの?」

「えーなるかなぁ?中身は全然普通の家庭だし大丈夫じゃない?親が固い職業なのは間違いないしw まあそんなことで結婚断られるならこっちからお断りだよ」

 

この会話をした時、場には非常に保守的な家庭観を持つ子がいて「そんなのヘン!」を連発しつつ色々と問いただしている様子がとても面白かった。

そしてAちゃんがこの話をした後、やはり同じ場にいたBちゃんが「実は私も・・・・・・」とはじめた話は更に衝撃的である。

 

 

2. Bちゃんの場合

Bちゃんの実の父親はBちゃんが生まれる前に亡くなり、Bちゃんが小学生になった後でBちゃんの母親と今の父親が「再婚」した。Bちゃんはずっと母親の姓を名乗っており、両親が正式に結婚していないという事実を知っていた。

 

「なんで籍入れなかったの?」

「それがね・・・・・・お父さんの名前が・・・・・・」

 

そこで彼女が口にした彼女の父親の苗字は衝撃的なものだった。Bちゃんの名前は決してDQNネームなどではない、ちょっと古風なかわいらしい名前である。しかし彼女の父親の苗字と組み合わせると、そこには小学生男子が好んで口にするような、非常に直裁で卑猥な単語が出現してしまうのだ。

 

「それはwwwwマジなのwwwwwwwwwwww」

「マジだって!!そんで両親が話し合って、女の子にさすがにかわいそうだってことになって」

 

我々は外野だから笑い話だが、確かに本人たちにとってはこの上なく頭の痛い問題であったに違いない。彼女の両親は1年以上にわたって話し合いを重ね、ある日母親が彼女に切り出した。

 

「あのね、新しいお父さんのことなんだけれど・・・・・・」

 

既に彼女は今の父親になついており、その点でなんら再婚に問題は無かったのだが

 

「新しいお父さんが来るとね、あなたのお名前が<censored>になるんだけれど・・・・・・」

 

そのときのことははっきり覚えていると彼女は語る。彼女はそれを聞くなり呼吸困難を起こすくらい泣き続け、翌日は顔が腫れ上がり学校を休むほどだった。

そんな彼女を母親もまた泣きながら抱きしめ「ごめんねごめんね、嫌よね」と謝りつづけた。

 

父親は職業上の都合で姓を変えるのは大変困難であり、彼女の母親はこの件で一度は別れを決断したらしい。しかし彼女の父親は子どもの気持を受け止め、事実婚関係のまま彼女と母親を家族として受け入れることを決断した。

 

「なんか・・・・・・もっとほかに方法はなかったの?」

「うーん両親も本当に色々考えたみたいだけれど、家族の中で私一人苗字が違うのもやっぱりかわいそうとか、色々あって」

 

「弟と苗字が違うのは困らなかったの?」

彼女の父親には再婚当時2歳になる男児がおり、今では彼女の弟である。

「あー小学校のときは友だちにちょっと聞かれたw でも中学以降はそもそも学校が違って接点なくなったから、そんな話出なかった」

 

「家族仲はいいの?」

「少なくとも私にとっては父親は本当の父親だし、弟も本当の弟。弟も生みの母親のことは全然覚えてなくて今の母のことを本当の母親だと思ってる。普通の仲良し家族だと思うよ」

 

 

書いていて思ったのだが、夫婦別姓制度を必要とするのは特定の職業にある人たちもそうだし、再婚家庭でも必要なケースが多いかもしれない。反対派はよく初婚で、かつこれから生まれてくる子どものことを心配しているようだが、子連れ再婚の場合には、子どもにとってはむしろ慣れ親しんだ苗字を変えることの方が負担ではないだろうか。

 

そもそも日本では姓と名のバリエーションが多く、姓名の組み合わせが壊滅的な結果をもたらすことも少なくないだろう。

 

婚姻を取り巻く事情はさまざまなものがあり、他人が安易に踏み込むのも考え物である。夫婦別姓という選択肢が子どもにとってもよい結果をもたらすことがあり得る、ということだけは留意しておきたい。