訪日観光客は日本になんか来たくない
ギョーム関連の愚痴だからギョームブログに書くべきなんだけれど、でも今のタイミングだと特定の誰かへの当てこすりととられかねないのでこっちへ。
中国から日本にやってくる観光客は別に日本に来たい訳ではない。彼らは「手軽に行けて、品質表示に偽りのない家電や化粧品やファッションブランドの正規品がたくさん売られていて、便利で清潔で安全で、色んな遊び場があってそこそこ楽しくてオシャレな街」に遊びに行きたいのであって、そこが日本である必然性はない。彼らに「日本の伝統的な魅力」とやらを訴えても響かない。そもそもリーチしない。順番が逆なのだ。
日本のアニメを見る外国人は日本のアニメを見たい訳ではない。彼らは「等身大の主人公による深みのあるストーリーが描かれた、大人の鑑賞にも耐え得るような作画と演出のよい、面白くてちょっとエキゾチックな映像作品」を見たいのであって、クールジャパンとかどうでもいい。彼らの求めるものが日本以外で製作されたところで、すぐにそんなこと気にもされなくなる。
図書館を必要とするひとは別に図書館に来たい訳ではない。彼らは「タダで新刊の小説が読みたい」とか「就活で効果を発揮するエントリーシートの書き方を知りたい」のであって、図書館よりも更に便利でお手軽な解決策があるならばいつだって喜んでそれを選ぶ。この話は以前「図書館を真に必要とするひとは "図書館" なんていう単語でググらない」という文脈で書いたことがあるけれど。
自分の売りたいモノをオシャレなパッケージで包み、麗々しい釣り書をつけることを「ブランディング」だと思い込んでいる輩に付き合いきれない。ブランド力というものは、顧客の要求に応え続けてきた結果つくものだ。「俺の売っているこれはこんなに手間暇かかっている素晴らしい物なんだからお前はカネを払って当然だ!!」などというメッセージをダラダラ伝えたものを「ストーリー」とか、ましてや「顧客はモノではなくストーリーを欲しがっているんだ!」なんて主張されるのにはもううんざりだ。
ヴィトンやエルメスがブランドたり得たのは、彼らが「モノ作りのストーリー」とやらを喧伝したからではない。ただ彼らは「どんなシーンにも持って行けるほど高級感がありエレガントで、かつ使いやすく作りがしっかりしており、アフターケアも万全な長く使える革のバッグが欲しい」という顧客の声に応え続けただけだ。ヴィトンやエルメスを高級ブランドだと認識しているうちの何人が、彼らの「モノ作りの歴史と姿勢」とやらを知っているというのか?
クリステンセン先生がありがたくも「顧客の用事を解決しろ」というプロダクト開発の基本を教えてくださってから一体何年経っているというんだ。「買ってほしいから売る」んじゃない。順番が逆なんだよ。
まずは顧客にとって、他でもないお前の売っているそれが一体何の役に立つのか言ってみろ。その後でその根拠をわかりやすく具体的に述べろ。そしてそれが過去現在未来においてずっと真実だと、真実にし続けると誓え。それがブランディングだ。頼むよ。
イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press)
- 作者: クレイトン・クリステンセン,マイケル・レイナー,玉田俊平太,櫻井祐子
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