エルの楽園

Twitterで垂れ流すには見苦しい長文を置きます。 あ、はてな女子です。

「五輪でボランティアで働いてくれるエンジニア4万人」の費用を計算してみたよ!

japan.zdnet.com

まずは、サイバーディフェンスを担うエンジニアを育成するための予算を獲得する。そこで育成されたエンジニアが2020年に開催される東京五輪の開催期間中の1カ月間でもいいから、ボランティアで働くという仕組み

なるほどなるほど。 

 

じゃあその「サイバーディフェンスを担うボランティアエンジニアを育成するための予算」は具体的にいくらぐらいになるのかな?計算してみましょう!

 

まず、純粋な学費を考えます。ここは情報系専門学校の学費が参考になるかな?

www.neec.ac.jp

例えば日本工学院のITスペシャリスト科(4年制)。4年間の学費+教材費は

4,689,200円(納入金)+83,000円(教材費)*4 = 5,021,200円

ざっと500万円ですね。

次に生活費。就学期間中の4年間は学業に専念して頂くために生活費の保障も必要です。寮など用意せず純粋に単身者が生きていくだけの費用として、額面で月20万円くらいがギリギリのラインでしょうか?

20万円*12か月*4年間 = 960万円

生活費と学費を合計すると

500万円+960万円 = 1460万円

これがひとり当たりの育成にかかる金額です。

 

これを最終的に4万人のエンジニアを育成するべく投入するのですが、最初に教育を開始したド素人全員が無事サイバーセキュリティの大先生になるとも限らないでしょう。この業界は厳しいのです。控え目に見て脱落率は20%、使い物になるのは全体の80%くらいかと思います。

なので1460万円は脱落率を考慮し、5万人くらいに対して投入されるものとします。

1460万円*5万人 = 7300億円

これが、1ヶ月間4万人のセキュリティエンジニアにボランティアをして頂くのに必要な金額です。

 

うーん……なんか最初ッから世界中の優秀なセキュリティエンジニア4万人に1460万円払って半年くらい来ていただく方がはるかに種々のコストが安くつくような気がしてきましたね。

まぁそもそも、オリンピックまで使える時間があと4年もないんですが……

 

こちらからは以上です☆

追記

「脱落率が間違っている、そっちが80%だ」とのご指摘を複数受けました。す、すみません。ただちに計算をし直しますね(> <)

脱落率が80%の状態で4万人のエンジニアを確保するには 4万人/(1-0.8) = 20万人 の志願者が必要であり、上記予算の総額は

1460万円*20万人=2兆9200億円

となります。わーお、国立競技場がもっと建てられるんじゃない?

 

なお、専門学校出たての新人4万人とベテランのハイスキルエンジニア40人だと後者の方がよほど戦力になるとの試算も有識者の賛同を得たので、こちらの場合の予算も計算もしておきます。

1460万円*40人=5億8400万円

 

……うん、素直に普通にお金払えよ!!

 

こちらからは以上です。

 

2時間で書ける!職務記述書の作成方法

タイトルは釣(ry

lafrenze.hatenablog.com

このエントリで「職務記述書(Job description)を書こうよ!」という話をしたところ、割と多くの方から

「職務記述書って何、初めて聞いた。どうやって書くの……?」

「全員の合意を取るなんて無理ゲーじゃん、意見調整どうするの?」

などというご質問をいただいたので、本稿では職務記述書をチームメンバー全員でよってたかってざっくり書く方法を解説します*1。さすがに純粋に2時間だけできっちりした職務記述書のすべてを書いてしまうという訳にはいかないですが、この方法を使えば一番難関のスキルセット一覧を書き出す作業が短時間でできますし、全員を一度に拘束するのも2時間くらいで済むかと思います。

このやり方が向くのは以下のようなケースです;

  • 初めて職務記述書を書くけれど、どうすればいいかまったく見当がつかない
  • そこまで厳密なものでなくても構わないけれど、今後の話し合いのための叩き台が欲しい
  • 今後の採用や人材育成の方針について関係者の意見を聞きたいけれど、とっかかりが解らない

用意するもの

  • 職務記述書の作成に関わってほしい人々(10人未満がやりやすいです)
  • 職務記述書の作成に当たって音頭を取る特定個人(多分あなたです!)
  • 会議室
  • 大判サイズの付箋 ×3色 ×人数分

大体このくらいのサイズがあれば十分かと思います。

  • サインペン
  • ホワイトボード×3面、あるいは模造紙3~6枚
  • ホワイトボード用のペン、あるいはマジック
  • 上長、あるいはチームリーダーの同意

下準備

これは職務記述書を実際に書き始める2、3営業日前の朝にやるのが一番いいかと思います。

作成に参加してもらうメンバー全員に、職務記述書とはいったいなんであるか、何のためにこれを作るのかを説明し、理解してもらいます。

  • 採用のため
  • 今後の人材育成のため
  • 他部署との円滑な連携のため

などなど、職務記述書を作成する理由はそれぞれあるはずです。自分の状況に合った理由を説明します。

そして全員に3色の付箋を配布し、

  1. この業務を担当するにあたって、新人研修が終わるまでに習得できていなければ即日で死ぬような大前提となる必須の知識・技能
  2. 配属直後にはなくても構わないけれど、早いところこれを習得しておいてもらわないとちょっと一人前という訳にはいかないんじゃない?という知識・技能
  3. 今後習得できれば実に素晴らしい、重要な戦力になれるような知識・技能

上記の1~3に付箋の色を割り当てます。そして1つの付箋に1つの知識・技能をサインペンで大きな文字で書いてもらうとして、それぞれにつき一人当たり5枚以上20枚以内*2を書いてもらうようお願いします。また付箋を書いてもらうにあたって、メンバー間での相談や意見のすり合わせはしないよう注意します。あくまで個人の考えに基づき、普段の業務の中で気づいたものをなんでも書いてもらいます。

ここで書く知識・技能は断片的でも構わないので、あんまり抽象度を上げないようにします。例えばグラフィックデザイナーであれば

「解像度について理解している」

と書くよりかは

「印刷物の入稿データに72dpiの画像を貼り込まない」

と書いた方がより良いです。日頃の恨みを込めて書き殴りましょう。

また、各付箋に誰が書いたかを示す記名は必要ありません。無記名でやります。

本番

職務記述書の作成はブレインストーミング-簡易KJ法形式で行います。ブレインストーミングを全然やったことがない、という場合は、以下のエントリが簡潔で参考になります。

効果的なブレインストーミング。あなたのクリエイティビティを限界まで引き出す方法 - shi3zの長文日記

実際に全員で職務記述書の作成に入る日の朝に、全員から付箋を回収し、あらかじめざっと目を通しておきます。そしてブレストが始まる直前のタイミングでそれらの付箋をホワイトボードか模造紙に貼り、1~3の各カテゴリごとに似た内容の付箋をまとめ、各グループに見出しをつけておきます。

どのようにまとめるかはとりあえずフィーリングで適切に決めます。例えば「印刷用データはCMYKで作成する」と「印刷用データにGIF画像を貼り込まない」は「カラーモードについての知識」とまとめられるかもしれません。また後者は「WEBサイト用に納品する素材は.psdのままではなく必ずWEB用画像に書き出す」と組み合わせて「ファイル形式の知識」とまとめられるかもしれません。

そして会議室に集まったメンバーにその付箋の集合体を見てもらい、まずは自由に30分間、雑談ベースで意見を述べてもらいます。この段階で付箋の移動やまとめ直しなどが発生する場合もあります。どんどんやりましょう。

次に10分間、その結果を踏まえて全員に再度付箋を書いてもらいます。この時も相互に相談などをせず、黙々と書いてもらいます。この段階でおそらく付箋に書かれる内容にはある程度の抽象化が発生しているはずです。

最初に付箋の束を貼ったホワイトボード、あるいは模造紙を崩さないように一旦撤去し、新しい真っ白なホワイトボードに再度新しく書いてもらった付箋を貼り、グルーピングします。この時、各付箋のグループの重要度を意識してグループを置く位置を決めます(例えば「解像度の知識」より「カラーモードの知識」の方が重要、など)。やはり30分間の時間をとり、全員で意見を出し合いながら配置を決定します。

この段階で全員がそれなりに納得するような付箋の配置ができたらひとまず目標達成です*3。やはり付箋を崩さないようにホワイトボード、あるいは模造紙を一旦撤去し、付箋の内容を新しいものに清書していきます。大体、以下のような感じで書けるはずです。

1. 必須の知識・技能

  1-1. 解像度について理解している

        ・入稿データに使用する画像の解像度に留意する

        ・媒体に応じた適切な解像度のデータを作成できる

        ......

  1-2.  著作権に関する知識がある

   ......

2. 基本的な知識・技能

  2-1. タイポグラフィに関する知識がある

  2-2. 案件にふさわしいカラーパレットを作成できる

   ......

3. 習得が望ましい知識・技能

  3-1. デッサン力がある

  3-2. 3Dモデルを作成できる...

 もし年齢や身長、視力等の身体的制限や業務遂行に必須の資格等があるならここでちょこちょこっと書き足します。この清書が完了したら、ここでひとまず職務記述書が完成です。

この後どうするの?

でき上がった職務記述書はグループウェアか社内WikiGithubの上などに置いておき、関係する全員がいつでもそれを参照し、必要な修正を行えるようにしておきます。職務記述書は生き物です。どんどん変更が加えられていくことを周知し、実際にガンガン変更しつつ運用していくことをお勧めします。

またせっかく作った物なので大いに活用していきましょう。具体的には

  • 採用時に求める人材像の要望リストとして人事部に持っていく
  • 新人研修の指針にする
  • 勉強会のテーマを選ぶのに参照する
  • 今後の部署内の評価基準や方向性を定める際の意見提案としてマネジメント層に見せる

といった使い方が考えられます。特にチームの外に対してなにか意見を通したい時に、ドキュメントになっているものがあると結構楽ですよ。アイデア次第で使い方は無限大だね!

幸か不幸か日本では雇用契約時の職務記述書が必須ではありません。だからこそ発生するデメリットもあるのですが、裏を返せばオレオレ職務記述書をチーム単位で作ってしまってもさしあたって大した問題にはならないということです。

「日本企業ではジョブ型雇用ではないから職務記述書の意義がない」という説もありますが、ジョブ型雇用ではなかったとしてもそれが各担当者のスキルや業務内容を可視化・共有しない理由にはならない、とわたしは思います。誰かの仕事を制限したり、あるいは誰かに仕事を押し付けたりするための職務記述書ではなくて、お互いがお互いの仕事に対する認識を共有し、よりスムーズなチームワークを進めるための道具として使っていっていただければと思います。

注意点

  • ブレスト成功の鉄則は「時間厳守」です。どうしても議論が長引く場合は別途場外乱闘の場を設けることとし、なにがなんでも一旦閉めます。
  • 「付箋が絶対」です。どんなに興味深い議論が口頭で行われたのだとしても、付箋に反映されていなければそのことは忘れましょう。
  • 声の大きすぎるひとに注意します。他のメンバーが発言できていない場合には、適切に仕切りましょう。

 

ではでは、可能であれば社外にも公開して頂けることを期待しつつ、当ブログでは職務記述書の作成を心より応援しております。

*1:本式の職務記述書はそのポストに必要とされる職責の範囲や待遇等を含み、それらを分割して記述しますが、そのためには経営層を交えた社内全体の調整が必要であり、最初からその製作を目指すのは現実的ではありません。本稿では実務担当者において実現可能性があり実用性も高いと思われる「日々の業務に求められるスキルセットの明確化」に注力して解説いたします。

*2:この辺りの数字は現実に応じて適当に調整をしてください。ただ、一人当たり20枚を超えると破綻しやすいように思います。

*3:もしこの段階で意見の終息が難しい場合は、もう一ラウンドやります。ただし、それ以上は日を改めることをお勧めします

神戸・三宮の日本酒飲み放題のお店「ニューキタノザカ」に行ってきました&テイスティングメモ

神戸・三宮の駅近くにある日本酒飲み放題のお店「ニューキタノザカ」が開店したので早速潜入してきた。

f:id:aliliput:20150505181836j:plain

f:id:aliliput:20150505181813j:plain

お分かりいただけるだろうか……

お値段は2時間で2000円、時間無制限で3000円。お酒は完全にセルフサービスで、セラーから気に入ったお酒を取り出して好きなだけ注いで飲む。燗の道具や氷もあるので好きな温度でお酒を飲める。

飲料水は無限供給されるのでちゃんとお水を飲みながらお酒を飲むよう指示をされる。おつまみは持ち込み、階下のカキ料理屋さんから出前が可能。小皿とお箸、調味料は貸して頂ける。ガスコンロも貸してくれるとのことなので、冬は鍋ができるかも?

店内は小ぢんまりとしていて20人も入れないような広さ。お客さんのほとんどは男性だったけれど雰囲気がよく、女性だけでも問題なく入れる。

というどう見ても天国のようなところです、本当にありがとうございました。

 

写真だけでもお分かりいただけると思うけれど、品揃えがかなり良い。個人的にも好み。一体どんな魔法でかき集めてきたのか分からないけれどそれはさておきとして、デパ地下で揃えてきた美味しいお惣菜と共に色々飲んできた。最初に言っておくけれど、今回口に入った中で不味かったものや気に入らなかったものは当然ながら一滴もない。以下テイスティングメモ;

f:id:aliliput:20150505182744j:plain

1. 澤屋まつもと 純米

かけつけの澤屋まつもと 純米。すっきりとした甘口で飲みやすく、さすが。後味が残らない方なのでするすると飲めてしまう。おつまみの必要を感じないが、食事と喧嘩するような味ではない。

f:id:aliliput:20150505183115j:plain

2. 梵 純米大吟醸 艶

梵のブルーボトルになにかつける難癖があるというのか?美味しくて涙が出る以外の言葉がない。天使が舌の先を蹴って去るような後味で、このすっきりさが恨めしい。淡い味わいで、口の中に他に何も入れたくなくなる。

f:id:aliliput:20150505184129j:plain

3. 新政 純米 エクリュ

前2つにくらべるとこれははるかに食中酒らしい。柑橘類を加えたような爽やかな香りと風味だけれど、味自体に酸っぱさはない。すっきりと夏らしく、お刺身やたたきに合う味わい。この洒脱さは実に新政らしい。

f:id:aliliput:20150505185840j:plain

4. くどき上手 純米大吟醸 出羽燦燦

出羽燦燦という文字列を見たら飲むという誓いを立てているので早速頂く。好みよりかは辛めだけれど温かみのある香りが口内に広がり、辛さが気にならない。後味もあまり残らず、飲みやすく食中酒向き。燗立ちもしそう。

5. 笑四季黒(生)

邪魔にならない美味しさでスルスル飲めてしまう。意識しないんだけれど気づいたらグラスが空になっている危険な味。これもまた食事の邪魔をしないのだけれど、でも何かを食べるよりつい無意識にこっちを口に運んでしまうのだよね。

6. くどき上手 純米大吟醸

出羽燦燦でないくどき上手。甘口で美味しく好きなタイプだけれど、大吟醸というには大分存在感があるしっかりした味わい。ただもちろん厭らしさはなく、上品な後味は大吟醸のそれ。

7. 蒼空 雄町おりがらみ

雄町のにごり。匂いが結構辛そうなんだけれど味はそういうことはなく、飲みやすい。初夏のにごりは爽やかで美味しいので、脂が多かったりちょっとねっとりした肴に合わせるといいと思う。

8. 小布施ワイナリー ソガペール ヌメロシス

なるほどこれがライスワインかーと思える、食事との合わせ方という点で白ワイン感覚で飲めるお酒。割と辛めだけれど気にならず、すっきりしていて実に食中酒向き。シーフードをたっぷり使った南仏料理に合わせてみたい。

9. 菊勇 三十六人衆 あらばしり

甘くて温かみのある味わい。これも冬に鍋と一緒に飲むといいかも。

10. 東洋美人 ジパング

本当に大吟醸なのか?と疑ってしまうほど濃厚な存在感。でも味わいの上品さは大吟醸のそれ。飲みごたえと満足感がある。

11. 仙介 特別純米

勧められて頂いた一本。食中酒向きの味わいだけれどつまらないところはなく、普通に美味しい。色んな食べ物との取り合わせを楽しめそう。

12. 東一の何か

記憶には残ってないけれど記録にはあるから多分飲んだのだとは思う……辛めだけれどそれ以上に濃厚で酸味もなく、単体で楽しめる味わい。

 

他にも飲んだようなのだけれど、メモがバイオハザードの日記かダイイングメッセージみたいになっていてこれ以上は判読できなかった。なんともったいない……今度またリベンジしたいと思います。

 

「察してほしい」の取扱説明書

※ 発言は個人の感想であり全く汎用性のない記事です。主語は最小です。「あっこれ自分には関係ない」と思ったらそっ閉じを推奨します。

 

Twitterでつらつら呟いていたら物珍しがられたので、まとめを書きます。

 

わたしはかなりの察してちゃんです。面倒くささにはちょっと自信があります。わたしの思っていることを察してほしいと頻繁に思っている部類の人間です。

ですが「察してほしい」とは「わたしの頭の中にある正解を言い当ててほしい」という意味ではありません。何か具体的に頼みごとがあるならその通り言います。わたしが「察してほしい」と思う時に求めていることは「一生懸命労力を使ってわたしの考えていることを察するべく努力してほしい」というものです。その結果としてどんなにとんちんかんな結論を出したとしても構いません。一生懸命わたしのために労力をつかってくれたという事態そのものを喜びます。結果ではなく、過程を求めています。

だから、「一生懸命君の考えていることを察するべく頑張った」という過程を見せて欲しいのです。黙ってなにか考えられていたところでボケっとしているだけなのか何か考えているのかは分からないし、そもそも真の思考とは自分ひとりで完結するものではありません。自分一人の脳内だけでああでもないこうでもないと妄念をこねくり回していても、それは一生懸命考えた内には入らないです。それは知的怠慢というものです。ちゃんとした思考には、それなりのプロセスがあります。

 

以下に2つほど例を挙げます。

 

「何食べたい?」に「うーん……何でも」と言われた時の対処思考

「何食べたい?」と聞かれて、わたしが「うーん……何でも」と応える時は、世の女子がそうであるらしいように「わたしが何を食べたいかを察してほしい」と思っています。つまり「わたしが何を食べたいかを一生懸命考えてほしい」と思っています。

わたしがなにを食べたいかを一生懸命考えるための理想的なプロセスは下記のように進行します。

1. 選択肢を絞るために手掛かりとなる情報の収集

この世に食事の選択肢なんて無限にあるのだから、まずは選択肢を絞らなければはじまりません。ヒアリングによって選択肢を絞るための情報を収集します。

まず食事に対するコストについて、下記のような質問が考えられます。

  • 家でご飯を食べたいか?外食をしたいか?
  • 近場がいいか?遠くがいいか?
  • すぐに食べられるものがいいか?時間をかけてゆっくり食事をしたいか?
  • 予算はどの程度か?

次に食事の嗜好について、下記のような各評価軸が考えられます。

  • さっぱりしている - 脂っこい
  • がっつり食べる - 軽めに食べる
  • 肉が多め - 野菜が多め
  • 温かい物 - 冷たい物
  • 和食 - 中華 - エスニック - インド - イタリアン - フレンチ - スペイン - トルコ 
  • エレガントなお店 - カジュアルなお店

これらの軸の選定と評価にはSemantic Differential法が使えると思います。フワッとした主観を評価するのによく用いられる方法ですからぜひこういう場面で活用したいですね。

これらの情報を、わたしとの対話によって収集してもらいます。これで大分選択肢を絞る手がかりが得られました。

2. 選択肢そのものの選出

上記の手続きによって選択肢を絞る手がかりは得られたものの、この段階での情報はあまりに漠然としすぎています。「さっぱりした和食で温かい物をゆっくり食べられる、そう遠くないお店で外食したがっている」といった程度の情報が得られたところで、特に都会なら該当する店舗が200件以上はあります。もうちょっと確実性の高い選択肢を得る必要があります。

ここで情報収集は次のターンに移行します。具体的には、わたしの食べログTwitterはてブ等で「行ってみたいレストランのリスト」に入れていたり、以前に「行きたい!」とつぶやいているお店のリストを収集してもらいます。

わたしは食べログのリストやTwitterアカウントを公開しており、twilogにも登録しています。それらを確認したり "行ってみたい" で検索したりすれば、わたしが興味を持っている飲食店の一覧が取得できます。その中から、前項で判明した条件を当てはめればかなりいい感じの精度で「わたしが今行きたいだろうお店」を推察できるはずです。

上記のような過程を踏んでもらった後に選ばれたお店が、例え実際はわたしの気分にぴったりではなかったとしても、とても嬉しいです。「わたしのためにここまで色々考えてくれたなんて……!」と大感激し、「ありがとう☆そこにいこっ///」となるのは確実です。

 

次はもうちょっとやっかい目の例を挙げます。

 

「何を怒ってるの?」「それくらい自分で考えて!」と言われたときの対処思考

世の女子がそうであるらしいように、わたしも第三者からは一見分からない理由で不機嫌になります。そして「なんで怒っているかくらい自分で考えて!」というような態度をとったりします。

(ちなみに「お腹が空いている」「眠い」「その他怒りをぶつけられている相手には全く関係のない理由で不機嫌」などと言った場合にはこのような態度はとりません。その場合は正直にそう申告します。したがってなんで怒っているかくらい自分で考えて!」というような態度をわたしに取られた場合、ほぼ確実に自分に原因がある(とわたしは思っている)と考えて頂いて構いません。)

この場合の原因究明のための理想的な思考プロセスは以下のようなものです。

1. 簡単に特定できる原因を潰す

このような場合、まず自分がなにかを忘れたりすっぽかしたりしていないか?の確認が最優先です。これらの情報は簡単に確認しやすく、先に潰しておくことで問題の拗れを防ぐことができます。具体的には

  • なにかの予定や記念日をすっぽかしていないかカレンダーを確認する
  • 頼まれていた用事を忘れていないかを確認する
  • メールやLINEの返信し忘れがないかを確認する
  • 髪型の変化や新しい服を着ていないかどうかを確認する

といったことです。全部合わせても5分とかからずに確認できることであり、原因が分かったらその場で解決ができます。どうしても自信がない場合は「ごめん、もしかして何か忘れていることがある?」と聞くと完璧ですね。

2. スコープを特定する

すぐに分かる簡単な問題が原因でなかった場合、原因となる事象が発生したスコープを特定します。例えば

  • それはいつ発生した事象が原因なのか?
  • 今回が初めてか?それとも以前にも同様の事象が起こったか?
  • 繰り返しの事象の場合、頻度はどの程度か?
  • 以前にも同じことを注意したことがあるか?
  • それは言動に関することか?あるいは振る舞いに関することか?
  • 第三者の関わることか?関わるとしたらそれは誰か?
  • 金銭の絡む問題か?
  • 社会慣習や礼儀作法に関する問題か?

といった事柄です。これらを確認すると「昨日初めて紹介された友だちに何か不躾な言動をしたことが原因らしい」とまでは特定できるはずです。この段階で思い当たることがあるなら、もう解決はすぐそこです。

3. 賠償案と再発防止策と併せて解決に臨む姿勢を見せる

ここまで特定できてもどうしても原因が分からない・思い当らなかった場合、素直に「ごめん、~~~が原因だとまでは思うんだけれど、どうしても心当たりがない。理由を教えてくれる?」と聞きます。最初から「えーなんだよ、むくれてないで言えよ!」と言われるのとは違い、色々と原因究明の努力をしてくれた上での質問ですから、さすがに面倒くさい性格のわたしもこれ以上引っ張ったりはしません。この時点で大分気持も態度も軟化していますので、素直に理由を話します。

ただ、ここで理由を聞いて「そのことかーごめん!」と言われただけでは納得ができません。賠償と再発防止策をセットで提案してもらいたいと思います。例えば

  • 目の前でカレンダーやTODOリストに登録する
  • お詫びの印に美味しいケーキ屋さんに連れていく

といったことですね。謝罪と賠償と再発防止策はセットです。3つで1つです。

 

ここまでして頂いたら「こっちこそ色々考えてくれてありがとう、なんて誠実なひとなの……///」と思えるので、機嫌が直るどころか好感度も寛容度も増しています。

 

まとめ

つまるところ、わたしが求める「一生懸命な推察」は、わたしに対する情報収集なしには成立しません。わたしに何一つ質問しないまま脳内でああでもないこうでもないと考えるのも、わたしに明示的かつ具体的なただひとつの回答を求めるのも、どちらも知的な労力をケチっています。わたしが察してほしい時は労力そのものを求めているので、どちらの対応もわたしの望まないものです。「何かしてほしいことがあるならはっきり言え」と言われましても、言われたことだけしかやらないロボットと付き合いたい訳ではありません。

もちろん非公開情報を手掛かりにしろなどとムチャクチャなことは言いません。わたしは可能な限りライフログを公開し、質問に回答しています。Facebookのようなログ収集が困難なSNSも使用していません。脱出ゲームのごとく、労力をかけ頭を使えば必要な情報はすべて収集できるようにしてあります。ここまで下準備しているのだから、後はちょっと頭と手を動かしてくれればいいだけです。

ただこうしたプロセスを成立させるための省力化や自動化は大いに歓迎します。例えばわたしのTwitterで「行きたい」や「欲しい」という言葉が含まれるTweetを自動収集するスクリプトを作成したり、些細な予定でもすぐカレンダーに自動登録するよう設定したり、あるいは一度表明した不満を管理するためのBTSを導入したりといったことはとても嬉しく思います。「わたしのためにRedmineまで立ててくれるなんて……!」と泣くほど感激します。個人的にはTrello+Slackでたくさんだと思っていますし、そもそもやってもらったこともありませんけれど。

 

ちなみに、なんでわたしがこのような面倒くさい過程を求めるかというと、愛とは骨身を惜しまないことだと思っているからです。少なくともわたしは普段から相手の求める物を上記のようなプロセスを踏んで一生懸命考えるよう努めているので、偶には相手にもわたしのために脳味噌を使ってほしいのです。いつもとは言いませんが。

恋人や配偶者に向かって無限の徒労を求めるのはもちろんクソです。でも例えば職場で上司やクライアントに対して日常行っている心遣いの1/16でも自分に向けてほしいと思うのは、それほど無理筋な要求ではないと考えています。いつも仕事が忙しいの一点張りでちっとも構ってくれないのだから、偶には少しくらい甘えてもいいではないですか。

普段は優秀な社会人なんだから、お仕事ではこれくらいやっているんでしょう?顧客から要求仕様を聞き出したりクレーム対応をしたりする労力に比べたら、こんなもの取るに足らないと思いますけれど。

 

 

技術分からないCEOのアタシが考えるイケてるCTOの条件

※発言は個人の感想です。


わたしがCEOなのは本当です。いわゆる創業社長ってやつで、なし崩し的にCEOになってます。技術が分からないのも本当。また弊社は大企業でもなければIT企業でもないので、大企業だのIT企業だののCTOの場合はまた話が違うのかもしれません。まぁそんなの、究極的には各社それぞれケースバイケースですよね。
ただイマドキ、どこの会社も業務システムを使っているし外部向けのWEBサイトくらいあるでしょう?オンラインマーケティングだって少なからずやっているはずです。だからITと無関係な企業ってのもないんじゃないかなぁ。


そんなわたしがCTOに求める役割は
「経営課題のうち技術によって解決できるものを見つけ出し、解決してほしい」
です。
あ、念のために言っておくと、こういう文脈で「~してほしい」というのはモヤッとした個人的要望ではなくて、社として負ってほしい職責を指します。だから職務記述書に書くとするならば
「CTOは経営課題の技術的な解決に責任を負う」
という記述になりますね。

それと、CTOというのが実際に社内/社外、法的にどのような存在なのかは

wadap.hatenablog.com


こちらの記事に詳しいです。マジでこれくらいは前提として理解しておいて頼む。


さてここから先は話を平和にするためにエビ料理レストランに例えて話をします。;

丸の内エリアにエビ料理レストランを新しく出店することにしました。各種の貴重なエビをメインにしたオシャレなレストランですが、ランチから気取らないディナー、ちょっとしたパーティーまで、シーンを選ばず幅広くお使いいただける感じのお店です。
一番のウリは何といってもエビです。単なる高級なエビというだけではなく、世界中から四季折々の珍しいエビを使って、それらの美味しさを最大限に引き出したお料理やお酒を提供します。あのエリアにそこまでエビにこだわったお店はないし、日本人は世界一エビが好きな人種です。
これはイケる!!!!

プランを作り出資を募ったところ、幸いにも素敵な出資者が現れて問題なく資金も店舗も用意できました。開店準備は完璧です。ただ問題は、わたしは全ッ然料理のことは分からないしエビ料理なんてできません。エビ自体は大好きだし食べる方にはかなりの自信があって、我ながら武藤鶴栄氏に勝るとも劣らない目利きだと思っているんですが……だから総料理長を募集することにしました。
それなりの待遇で募集をかけたところ、以下の3人が応募してくれました。

  1. 某三ツ星ホテルのレストランで20年間料理長をしていたベテランシェフ。志望動機は「そろそろ新しいことをしたいから」
  2. 隠れ家系でお客様を選ぶようなエビ料理店(1日5組まで、完全予約制で半年待ち)の元オーナーシェフ。志望動機は「色々あってお店が人手に渡ることになり(ry」
  3. 気鋭の天才エビ料理シェフ。志望者の中では一番の若手だが独創的な料理で知名度が高く、数々のメディアに登場しており著書も数冊ある。ネームバリューは現時点でトップ。志望動機は「自分のお店を持つ時期かと思って」

それぞれにエビ料理を作ってもらったところ、いずれもごく基本のエビフライから名状しがたい独創的な料理まで完璧な腕前です。腕前に甲乙を付けるには岩崎民次氏にお越しいただく必要があるレベルです。


あなたならこの3人のうち誰を採用しますか?それを決めるためにここに挙げた情報以外に必要なものがあるとしたら、それは何ですか?

 

 

わたしが総料理長に現時点で求める仕事は以下の通りです。

  • 他の腕の立つシェフを採用してほしい
  • お店のコンセプトに合ったメニューを決めてほしい
  • 総料理長として他のシェフを取りまとめ、厨房を使いやすくセッティングしてほしい
  • その他、お店を流行らせるために気づいたことがあったら教えてほしい
  • 以上のことを、資金計画を理解しそれから逸脱しないようにやってほしい

また、実際にお店を運営していく中で以下のような問題が発生することもあります。

  • 今週メインに出す予定だった三重県産セミエビが不漁で半分しか確保できなかった、どうしよう?
  • そろそろ旬のゾウリエビをメニューに加えたいがゾウリエビを調理できるシェフが見つからない、なんでだろう?
  • テレビ出演が決まったので放映後しばらくは普段の倍の来客数が見込まれる!対応できる?
  • 秋のパーティーにどうしても国産クルマエビを出してほしいというお客様がいるけれど、季節が合わないよ!


これらの問題が果たして「技術的課題」なのかそうでないのかを弁別するのは実際にはとても難しいことです。メニューはもちろん技術的課題ですが、マーケティング上の課題でもあります。流行るとか流行らないだなんてのも広告宣伝に関する部分が大きそうです。また例え技術的課題なんだとしても、それを解決するための資金がが足りてないならばできることは限られます。そして不漁は総料理長の責任ではないし、採用も「そもそも応募してこない」という問題ならば「もっと給料上げろよ……」といった解決策しか思いつかないでしょう、普通は。

でもねー、そこをお客様気分でいられたくないのよ。「ここからここまではCTOである俺の仕事、ここから先はCEOであるお前の仕事」なんてサッサと決めつけてしまうようなCTOでは困るんです。
役割分担を否定している訳ではないんです。ただ、「自分の問題」として考えてほしいんですよ。


例えば、三重県産セミエビが不漁であれば「すみませんあれはナシになりました!」と謝罪広告を出すのも解決策の一つです。少なくともわたしだけがこの問題に対応しているならば、正直言って他の方法が思いつきません。ただ各種の修羅場をくぐり抜けてきた経験豊富なシェフならば

  • 以前に試したことがあるが、食味の似るコブセミエビを併せて仕入れられないか?
  • 宮崎県産のセミエビを確保できる仕入れルートを知っているが、それを使えないか?

といった解決策を提案できるかもしれません。

また、ゾウリエビが調理できるシェフを確保できない理由について、わたしならば「おちんぎんが少ない所為……?でもこれ以上お金出せないし(;_;)」以上のことは考えられないのですが、料理人コミュニティに関する知識が豊富なひとならば
「あれは美味だが漁獲量が少ないために経験のあるシェフが少ない。ウチワエビに構造が似ているので、ウチワエビを調理できるシェフを探して少し再教育したら何とかなる」
と分析してくれるかもしれません。

限られたマーケティング費用の中でお店を流行らせる施策について、技術とは直接の関係がなくても、周辺領域の知識があるならば
「あのグルメ雑誌は読者数はそう多くないんだけれど、レストランに詳しくて口コミの影響力がある人が多く読んでいる。何度か取材を受けたこともあるけれど、記者もとても知識があってしっかりしているんだ。記事広告を出すならあの雑誌がどうかな?」
という情報をくれるかもしれません。


わたしひとりでは、色んな問題に対して「詰んだ……!」と頭を抱えてしまうんです。ひとりだけで考えられる解決策の幅には限界があるからです。
たとえその案が最終的な解決にならなかったとしても、専門家として異なる視点から一緒に考えてくれるひとが欲しいのです。

 

他にも、色んなことを話し合っていきたいです。例えばわたしが「会社員向けの平日ランチメニューとしてイセエビの殻つきコキーユを出そう!」と言い出したら、「お前コキーユを一つ焼くのに何分かかると思ってるんだ?目を覚ませ!」と言ってもらいたいです。
また総料理長が「セミエビとアブラゼミのフリッター」とかいう料理をメニューに加えようとしたら、わたしは責任もって「そんなもの食いたい客がいる訳ないだろう食べログになんて書かれるか分かってるのか?目を覚ませ!」と言います。
テレビの取材で緊張して変なことを口走り批判Tweetが殺到してるって?大丈夫わたしに任せて!炎上対応ならちょっと自信あるんです。

相手が困っていることは何でも相談してほしいし、わたしも何かあったらどんどん相談します。


世の中に経営陣の心構えを説いた経営指南書はたくさんあります。ただCEOはアレをやれ、CTOはこれだけやっていればOK、などという切り口で指南している本は見たことがありませんし、おそらくないはずです。現実の経営は複雑で、かつ目まぐるしいスピード対応を求められる戦場で、「これはアイツの仕事だから~」などと言っていられる余裕はないからです。それぞれに専門性を持った多様な人材を経営陣に備え、それぞれの得意分野で精いっぱい能力を発揮して頑張ろう、というのはアリだと思うのですが、各タスクの完全な切り分けはできないでしょう。*1

ぶっちゃけねぇ、CEOになるとかCTOと呼ばれるとか、結果ですよ結果。
それは「経営責任者の中で主にそっち方面を担当するヒト」に与えられる便宜上の称号でしかないです。


弊社としては、CTOには技術者として十分な見識と腕前があるなら、それ以上の"能力"は求めません。ただ、とにかく同じ方向を向いて話し合えるひとがいいな、と思います。

*1:その辺の話は「経営の未来」が非常に示唆に富むので、興味ある方はぜひどうぞ。

あの時、わたしが考えていたこと

もうすぐ二十歳になる年下の友人に、わたしが彼女くらいの年齢だった頃は何を考えていたかと聞かれたので、人生のどこで何を考えていたのかを思い出しがてら備忘録を書いておく。それぞれの年齢において生活や恋愛や仕事の悩みなどは相応にあったが、それは特に年齢固有のものではないと思うので、あくまで「その年齢」に考えていたことを記録する。

(※発言は個人の感想です)

 

10歳の頃、世界には秘密がたくさんあって、わたしたちにはそれが隠されていると思っていた。

大人たちは世界の秘密を知っているけれど、彼らにも何か都合があるのか子どもにはそれを教えない。だから何とかしてそれを暴いてやりたいと思っていた。

市立図書館の隅っこに放置されている、小さな字の古ぼけた本、街路の植え込みの下の暗がり、無数に落ちているきれいな石やドングリの中、そういったものに世界の秘密が隠されていると思っていた。だって大人は、わたしがそういったものを丹念に調べようとすると「なにをグズグズしているの、さっさとしなさい」などと叱ってそこから注意を背けようとするのだから。

堀辰夫「ルウベンスの偽画」に、ヒロインとその母の指が「彼女のふっくらした指」と「夫人の引きしまった指」と描写されている。それを読んでわたしは思わず自分の手を眺めた。10歳の童女の指はまだ細かったが、引き締まってもいなかった。わたしはもう少し自分が長じたらこの指が太り、そして大人になったら細くなるのだと思った。世界の秘密をまた一つ知った思い出として、とても印象に残っている。

 

15歳の頃、日常が永遠でないと知って、日常の終わりを恐れていた。

この年齢の子どもの生活は目まぐるしくて、3年程度で所属するコミュニティや社会からの取り扱いがどんどん変わってしまう。しかも、当時は阪神大震災オウム事件等も記憶に生々しく、日常なんてまったく永遠ではなくて簡単に崩れてしまうと思い知っていた。社会全体がいわゆる「世紀末」思想の全盛期だったころだ。

今の日常もきっとすぐに終わってしまう。その時はどうなってしまうのだろう?今の自分には大切なものやひとがたくさんあるのに、それらはきれいさっぱり失われてしまうんだろうか?

一日でも長く今日が繰り返されればいいと願っていたけれど、同時に、必ずくる日常の終焉に対してどういう対策をとればいいのか、具体的な方法を知りたいと思っていた。

 

20歳の頃、自分が分別を完璧に備えた一人前の大人だと思っていた。

同い年の男の子がどうしようもなくガキくさく見えて、あまり関わりたくなかった。自分と違う考えや価値観を内心バカにしていた。それでも、もういい大人なのだから世界に対して理性的な態度でいなければいけないとも強く思っていて、今までの人生でやったことがない事には可能な限り挑戦した。苦手な食べ物を食べてみたり、視界に入る喫茶店とバーには全部入ったり、遠くへ旅をしたり、全然関係ないゼミに乱入したり、見知らぬひとに会いまくったり、創業をして遊んでいたのもこの頃だ。めちゃくちゃに勉強したし働いたし、その反動でこんこんと寝込んだりを繰り返したりした。

世界に対する恐れは消えていて、ある種の博愛のようなものが芽生えていた。世界はわたしが生きるための道具ではなく、それ自体愛すべきものなのだと知った。

 

25歳の頃、こんなことをしていて意味があるのかと思っていた。

どんなことに対しても意義や客観的理由を求めるようになっていた。素直に「やりたいからやる」という気持にはなれなくて、なにか人生でキャリアになるとか、ひとに自慢できるとか、社会的に意義がある行為だからやる、とか、そういうのがなければなにかをすべきではないと思っていた。

人生に対していわゆる効率厨になっていたと思う。やりたいことは物凄くたくさんあったのだけれど、それを全部やっていたら到底身がもたない。だから選別のためにそうした理由を必要とした。そうして選ばれた「やりたいこと」は、どれも大成功とはいかなかったが間違いなく楽しかったし、有意義だと感じられた。でも、段々自分の「やりたい」という動機の重みは下がっていった。

 

30歳の頃、このままでいいのかと思っていた。

それなりに充実も安定もしていて、公私ともに恵まれ幸せに暮らしていた。おとぎ話の結末の「末永く幸せに暮らしました、めでたしめでたし」状態だった。でも今までの人生で、むしろ未知や不確定に慣れ切ったわたしには、ずっと同じ状態でこれから先の人生を過ごすなどと考えるとむしろ焦燥感が湧いてきた。

人生は変化しなければならないと思っていた。特にどうしてもこれといってやりたい困難な挑戦があった訳でもないが、しかし自由と快適はトレードオフだ。苦労なら今までに売るほどやってきて、ずっと安定した快適な生活を望んでいたはずなのに、いざそうなるとなんでまた大変な目に遭いたいなどとアホなことを考えるのか、我ながら理解に苦しんだ。バカな考えをなんとかして鎮めて、ちゃんと足元の今ある幸せを享受するのが人類の務めだとも思っていた。

 

それぞれのタイミングで考えていたことで、今はそう思っていないこともたくさんある。世界の秘密はもう、作る側に回った。日常の変化も、受け止める方法やどうしても変えたくない部分を守る方法を学んだ。多数の失敗を重ね続けて、自分は永遠にガキだなと思い知った。人生の意味はその時の自分だけが判断するのではなくて、周囲のひとや未来の自分も関係するのだから、今の自分ひとりで意味などを考えても仕方ないとわかった。そして、結局のところバカにつける薬はないことも分かった。

でもそのことをタイムマシンでそれぞれの時期の自分に伝えても、きっと全然理解してもらえないだろう。「何言ってんのこのおばさん??」で流される。自分のことだ、手に取るようにわかる。だから、今から過去の人生を振り返って後悔の類は全然ない。どうせ誤った選択に差し伸べられる救いの手を、それぞれのわたしは愚かにも誇り高く振り払うのだ。

35歳の自分がなにを考えているのか今はまだわからない。でもきっと彼女は、今のわたしが知らないことを知っていて、今のわたしが理解に苦しむことをやっているんだろうと思うと、ちょっぴり楽しみではある。

土鍋炊飯を全力で擁護する

イケダハヤト師に乗っかる訳ではないが、ご飯を土鍋で炊くようになってもう6年くらいにはなるので、この辺でひとつ土鍋での炊飯を全力で擁護してみたい。ついでに、土鍋炊飯をしてみるかしてみないか悩んでいるひとの参考になれば幸いである。

ちなみに使用している土鍋はこれ。

日本製萬古焼き みすずの 栗形 ごはん鍋 3合(三鈴窯日本製万古焼き)

日本製萬古焼き みすずの 栗形 ごはん鍋 3合(三鈴窯日本製万古焼き)

 

 1合用、3合用、5合用、7合用の4種類があるが、一人暮らしなら3合用をお勧めする。一合用は小さすぎて、返って取り扱いが難しい。もしたくさんご飯を食べるか、一度にまとめて3合以上のご飯を炊くか、ご飯土鍋を炊飯以外の用途で使いたいならば、もっと大きなサイズがよいかもしれない。

吹きこぼれが心配なら、ワンサイズ上を買っておくと間違いない。最大の7合用サイズでも、大きさは3合用炊飯器と同程度だ。それほど場所は取らない。

この土鍋にした理由は、内蓋がないので洗いやすいからだ。土鍋なのでやはり炊飯器の内釜よりかは重量がある。それと万古焼なので固めであり、伊賀焼などのような脆さがなく割れにくい。

中には使用方法を書いた説明書が入っていて、それに従えばまず失敗はない。

土鍋でご飯を炊くと火加減が難しいのでは?

炊飯用土鍋の場合、火加減は不要なので全然難しくない。とりあえず強火にしておいて、説明書に記載されている時間にキッチンタイマーを仕掛けておき、放置するだけだ。見ている必要もない。キッチンタイマーが鳴ったら火を消して更に放置するだけ。

段々慣れてきて、焦げ目をちょっとだけつけようなどとこだわりだすと火加減を自分で調整する必要が出てくるが、基本的には火加減は不要だ。

コンロを一つ占領するし時間を食うのでは?

炊くご飯の量にもよるが、加熱時間は10分足らずだ。火を止めた後は当然火から降ろして構わない。炊飯器よりはるかに早くご飯が炊ける。忙しい朝にもお勧めだ。

10分なんておかずの具材を切っているだけで過ぎ去る時間だ。一口しかコンロがない状況下で土鍋炊飯をしていたこともあるが、コンロを占領するなどという理由で困ったことはない。

保温機能がないんだけれど

ぶっちゃけ炊飯器の保温機能なんて電気を食うだけだ。土鍋で炊いたご飯は、そのまま土鍋で放置しておいても土鍋自体がご飯の水分を調湿してくれるので、いつまでもベチャっとせずに美味しいまま保存できる。ご飯を保存するお櫃には陶器製のものもあるが、ちょうどあんな感じでご飯を保存してくれる。食べる前に電子レンジで温めればいいし、冷ごはんでも十分美味しい。まるで炊き立ての冷ごはんのような味わいを楽しめる。

手入れが難しいのでは?

よほど大きなサイズの炊飯土鍋ならともかく、3合炊き程度なら圧力鍋を洗うよりも楽に手入れできる。炊飯器の金属製内釜よりかは重いが、土鍋タイプの内釜ならおそらく大差はない。

他のことに使えないよね?

貴様は炊飯器を買う時にご飯を炊く以外のことを考えて選んでいるのか?まぁ、最近は炊飯器クッキングも盛んなようなのでそういう人もいるのだろう。各種炊き込みご飯はもちろんのこと、コンフィやローストビーフ、煮込み料理などなど、炊飯器でできることは基本的に土鍋でもできる。ただ炊飯器ケーキだけは、この土鍋は上部がややすぼまっているために向かない。

うちはIHなんで……

あ、そりゃだめだ。失礼しました。

 

そんな訳で土鍋炊飯、お勧めです。なにかご質問がありましたらお気軽にお寄せください。